「もっと知りたい池田亀鑑と『源氏物語』」ある感想文

或る知人から届いた手紙は、「もっと知りたい池田亀鑑と『源氏物語』」の感想文だった。

この書籍は、今年5月末に「新典社」から発行されたもので、私もメンバーの一人である「池田亀鑑文学碑を守る会」は、日南町内外で250部の取り扱いをした。

以下ご本人のご承諾の下に紹介することで、記録に残しておくことにした。

久代安敏 様

 「池田亀鑑と源氏物語」、あれからすぐ読みました。かなり専門的な話もありましたが、それぞれに面白く、かつ内容も充実し、いっきに読みました。

 亀鑑の名は「源氏」の研究家として若い時から知っていました。しかし、溝口の人と思い、また「源氏」の何を研究したのか知りませんでした。この書を読んで初めて了解しました。郷土の偉人、日本最大の古典「源氏」の基礎的研究を大きく前進させたことがよくわかりました。この仕事に家族をはじめ多くの協力者があったことを知り、感動しました。

 とくに面白かったのは田坂憲二氏「『校異源氏物語』成立前後のこと」です。刊行前後の様子は、ひとつのドラマのように感じました。このような内容・文章は、ほかのところでは読めないと思います。

 対談の室伏さんと伊藤さんの論考、「源氏」の写本研究の歴史・経過がよくわかり、参考になりました。実は室伏さんの名は、岩波書店「新日本古典文学大系」の「源氏物語」(全5巻)の校注者のひとりであり、とくに写本研究に詳しいお方だと知っていました。実は小生鳥取大学から国学院大に変わったとき、氏は大学院で学んでおられたのではないか、同窓の方です。伊藤氏はうんと若く氏も同窓です。両氏のような研究者を同窓に持つことに、誇りを感じたところです。

 講演や論考、連載、コラムなどそれぞれに感銘を受けました。亀鑑の回想「花を折る」、全文を読みたく思いました。

 地元の原豊二氏、彼が米子高専に来たとき小生も勤めており彼の研究室で話したことがあります。「源氏」研究とともに地元の文化研究に精力的に取り組んでおり、期待しているところです。

 それぞれの論文の脚注が参考になります。二人の対談の脚注のなかに、藤井貞和と父親・貞文氏の名がありました。貞文氏は国学院で担任でした。明治維新史の講義を聞き、江戸めぐりを指導してくれました。我々はかげで「ていぶんさん」と呼んでいました。「貞文さ」んには小さい息子がいるという者がいました。この子が長じて東大を出て、「源氏」の大家になったことに時の流れを感じます。昨年の暮れ、氏の「日本語と時間」(岩波新書)を読み、源氏など原文を引用した緻密な論理展開に学問の厳しさを痛感しました。今回も若い時の、東京でのひと駒を思い出しました。

 続巻を期待します。 

                                             2011年11月

                                             鳥取県西伯郡南部町  宮倉 博