アベノミクス堂という寸劇

ちょっと気分転換に、寸劇の台本を書いてみた。

寸劇  アベノミクス堂                          作 久代安敏

場所  千代田区永田町の総理官邸に一番近い「アベノミクス堂」という食堂 

登場人物 女性店長、客の男1、男2、男3

女性店長、カウンターにガラスコップを並べている。カウンターの上には、定番の3つのメニューが貼られているし、すぐ出せるように用意されている。安倍首相の所信表明演説がCDデッキから流れている。

男1、下手から店に入り、テーブルに座る。

 (コップを盆に載せてテーブルに置きながら)いらっしゃいませ。

男1 この店さあ、看板架け替えるの大変だね。

 えぇ、まぁ…、だってしょうがないでしょう、総理大臣が毎年変わるんですもの。

男1 まあね、総理官邸に一番近い食堂だから仕方ないか。

 それにしてもいい名前でしょ、「アベノミクス堂」。

男1 そりゃぁ、「近いうちに解散堂」よりはよっぽどいいし、7年前の「戦後レジュームからの脱却堂」よりも断然分かりやすい。

 でしょ、お蔭様で開店から1ヶ月ちょっとで、ものすごく儲けさせてもらってるの。経済再生!商売繁盛!

男1 じゃあ、(品書きを指差して)あれあれ「無制限の金融緩和カレー」でも食べてみるか。2パーセントの物価上昇!

 さすが、財務省の先生、お目がお利きでございますわね。はいどうぞ。

     

男1は、黙々と食べる。つづけて、男2と男3が入る。男1は、「オッす」と軽く会釈。

 いらっしゃいませ、毎度ありがとうございます。

男2 ねえねえ、(品書きを指差して)「大型公共事業のバラマキ寿司」ってすぐにできるの?

 はい、勿論ですとも、レンジでチンするだけですから。(チーンと言って差し出す)さすが国土交通省の先生、お目がお利きでございますわね。この「大型公共事業のバラマキ寿司」、前の前のその前の総理大臣が、『コンクリートから人へ』っておっしゃるものですから3年半も冷凍してたのですよ。

男2 政権交代で、人も国土も強靭化!

 セメント、ジャンジャン売れますね、先生。

男2 「あっそう」。

 「あっそう」じゃないですよ先生。

男2 俺、どうも漢字が苦手でさぁ、キョウジンカのジンって何回書いても覚えられないんだ。

 読み間違いも駄目ですけど、書き間違いも駄目ですからね、先生。しっかり練習なされないと…。(紙と黒のマジックを持って来る)

男2 はいはい。(と、食べ始める。食べ終わると、マジックで「人も国土も狂人化」と書いている)

男3 じゃあ俺は、(品書きを指差して)「大企業支援の成長戦略ラーメン」でも食べてみるかな。

 はいはい、(カウンターから取り、差し出しながら)さすが、経済産業省の先生、お目がお利きでございますわね。あら、ごめんなさい、この「大企業支援の成長戦略ラーメン」、ずいぶんと麺が成長しすぎちゃって…。

男3 なんだか、うどんみたいだね。

 もうね、内部留保でどんどん膨れ上がっちゃって…。

男3 焼け太りは、しょっちゅうだけど、煮え太りは初めてだ。うまいうまい。

男1 いやぁ、おいしかった、ごちそう様。で、いくら?

 3名様ご一緒でよろしいですか?

男1 勿論。「金融」、「財政」、「成長戦略」、三本の矢、三位一体だからね。

 合計で3万円となります。

男1 3万円?

 ごめんなさいね、時価ですから…。

男1 時価って君、いくらなんでも1人1万円はないだろう。

 でもね先生、下関のスナックとか、博多の中洲のクラブとか、北九州のキャバクラで飲み食いしたことを思えば安いものでしょ。

男1 見たようなこと言うね。

女 見たんですよ、しんぶん赤旗。

男1 赤旗って、共産党の?

 ええ。

男1 あの新聞、ほんとのこと書くからなぁ。

女 7月の参議院選挙までは大人しくなさらないと。

男1 はいはい。じゃお先に。(外に出る)

男2 (男3に)じゃ俺たちも行くか。

男3 あぁ。

(2人、外に出る)

女 忘れ物ですよー(マジックで書かれた紙を見ながら)キョウジンカってこんな漢字だったっけ…。なんか違うような、まっいいか。

     女、店の看板に「安倍飲み食い尽くす」と「不安倍増」と「人も国土も狂人化」が追加で貼られている。

     幕。

 

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